マイトレーヤ正大師特別寄稿 第37回
慈愛の喜びと記憶修習の方法

 慈愛の実践とは何かについて、何回かに分けて書いてきました。
 今回は、教義・理屈より、体感的な側面について少々書いてみたいと思います。
 普通は、人は、見返りを求めた行動をします。例えば認められたい、愛されたい、大切にされたい、受け入れてもらいたい、称賛されたいなどなど。
 そして、そうされたときは、確かに喜び、快感があるかもしれません。
 でもそれは同時にストレスもあります。
 求めても得られないのではないかという不安、得られないときの失望、苦痛。
 これまで得ていたものに執着し、守らねばならないときの緊張。
 失うことの不安、失ったときの落胆、激痛。
 求めているものを他と争わなければならないときの緊張、嫉妬など。
 このような苦しみ・ストレスの裏側に、得られたときの快感があります。
 当然、心は苦楽双方を経験し、安定せず、ナーディーは詰まり、体も安定しません。
 こうして、喜びを他に求めようとする場合、心が解放され、休まることはありません。
 それに対して、与える喜びに集中した場合は、このような心の緊張・ストレスから一切解放された喜びがあります。
 他に求め、ある意味で奪って得る喜びと、他に与える喜び。
 このどちらがあなた方の心に解放と潤いを与えるでしょうか。
 これは、皆さんのだれもが直感的にわかることではないでしょうか?
 特に、プライドや卑屈など、自分のために何かを求め続けて、常に心を苦しめている人が大勢いますね。
 その人たちは、他に与える喜びという、自分の心が本来有している宝を失っているように思います。煩悩という麻薬に中毒になり、純粋に他を愛するという、心の解放の道を見失っているわけですね。
 さて、秘儀説法(質疑応答)の中に、「四無量心が達成されたときに生じる外側と内側の現われ」について解説されたものがあり、聖慈愛については、外側の現われとして、「法友と解け込む。会話が殺伐とした状態がなくなり修行者同士が和気藹々{あいあい}とした関係になる」というものがあり、内側については、「喜びの感情が増える」というのがあると説かれています。
 このように、慈愛の実践を深めれば、法友同士が解け合い、和気藹々とした関係になり、個々の喜びが増えていく教団になるでしょう。
 さて、次に慈愛を身に付ける上での注意です。
 前回も述べましたが、それは記憶修習・記憶実践に尽きます。そして、そうしようとするとき、「自分は慈愛の実践ができるのだろうか」とか、「慈愛の気持ちがなかなかわいてこないのだが」という気持ちが出てくる人は、しっかりと思い込むのがいいと思います。例えば、自分は慈悲の実践をしている者だと思い込むのです。関連する説法を見てみましょう。
(質問)愛と哀れみの実践ですけれども、修行の途中ですと、まだ三界も経験できないし、真実がわからないので、実際に落ちていく人に対して、哀れみとか愛を持つことはできないですよね。(中略)

(回答)(中略)そうじゃないと、こうなんだ(と思う)と、ね。哀れみは必要なんだと、愛は必要なんだと、修行は最高に素晴らしいんだと、(中略)そう思い込む訓練がなされてないんじゃないかと。そして、思い込みこそは、第2のヨーガであるクンダリニー・ヨーガの条件でもあります。(中略)思い込みのない人は、人間的なだけであると。(中略)実際は、人間的な思い込みの強い人である。(中略)自分を修行者だと思い込むと。自分を仏道を歩いている者だと思い込むと。自分を慈悲の実践をしてる者だと思い込むと。それを思い込んでいるうちに、思い込みのデータがどんどんどんどん増えてきます。これはマントラと同じです。つまり、肯定的なデータが増えてきたと考えなさい。そして、いつの日か、足を引っ張るデータが、ちょうど湖に浮き沈みしていた水のけがれの泥がね、湖底に沈むのと同じように沈んでしまい、上には蓮の花が咲くんだよ。この蓮の花というのは菩薩の心を表わしています。

 思い込みは、マントラのように繰り返し繰り返し、暇を見てはやるのがよいでしょう。
 また、潜在意識に入っているとき、すなわち、夜寝る前や、朝起きたとき、プラーナーヤーマ、ムドラーなどで、ボーっとしているときに、やるとさらに効果的です。
 グルヨーガ、グルヨーガ・マイトレーヤなどの秘儀瞑想の観想を思い出してください。あれも思い込み、自己暗示ですよね。つまり、「自分は、仏陀、シヴァ大神、マイトレーヤである(もしくはそれらになった)」、と思い込み、その気持ち・イメージを膨らませる。
 これは、心理学などの自己暗示や、イメージ・トレーニングでもそうですが、この場合は、現在進行形(慈愛の実践をしている)とか、完了形(慈愛の実践を達成した)の方が、有効な思い込みとされています。秘儀瞑想もこの形の文章を取っていますね。一方、「なりたい」などというのは、その裏に、まだそうなっていないという意味も同時に存在しますから、潜在意識に対しては、効果が薄いともいわれています。
 ですから、理想の状態を実践していると思い、その状態の気持ち、イメージを膨らませるとよいと思います。こうする中で、皆さんが持っている清らかな経験の構成が引き出されるでしょう。皆さんにはすべて、仏性、真我があり、また過去世から今生における、グル・真理勝者方との縁・経験の構成があります。こうした肯定的な思い込みによって、清らかな経験の構成が引き出され、否定的な下位の経験の構成が減ってくるでしょう。
 それでは皆さん、日々、見返りを求めない愛、すべての魂への愛の記憶修習に励みましょう。
 すべての真理勝者に帰依いたします。
 慈愛の教師である、到達真智運命魂、未来の真理勝者に帰依いたします。