マイトレーヤ元正大師の特別寄稿

第19回 お供物の変更に関して


 この1カ月ほどの間に、お供物の内容にいろいろな変更が行なわれる予定です。その宗教的及び栄養学的な意味合いを前もってお話ししておきたいと思います。

 一つ目は、複数のコースができて、選択制になることです。

 選択制に移行する中での最も重要な変更は、今までのメニューに加えて、動物性タンパク質を一切使わないメニューの選択肢を設けたことでしょう。

 現在のお供物は、パン、メイト、ラーメンなどには、卵を中心として動物性タンパク質が使われています。すべての現象には表と裏があるように、動物性タンパク質にも、長所と短所があります。

 短所としては、消化する上での負担が相対的に重く、腸内で毒素に変わりやすく、それを解毒する肝臓などの負担になるという点が一つ。パン・メイトなどが重すぎて食べられないという人はこのタイプかもしれません。

 二つ目は、栄養学的、科学的なものではないですが、動物性たんぱくだから、修行でエネルギーを昇華できないと、性欲や邪悪心が生じやすいのではないかという見解もあります。

 この短所は長所と裏表です。火元素が強く、消化器官に問題がなく、修行でエネルギーを昇華できるなら、今までどおりのメニューの方が、パワー、熱は生じやすいという長所があります。トゥモのヨーガ(熱のヨーガ、ツァンダリ−)を経典でも動物性たんぱく源が一定の条件の下で勧められています。わたしも、ツァンダリーの修行が進み、甘露が落ちたら、至福が拡大するので、肉、チーズ、魚などを取る方がいいが、それで(性欲が増大し)夢精をするならまだその段階ではないと考えるように教えられたことがあります。また、雑誌の対談でも、肉食を一概には否定されておられず、修行初期の浄化のために菜食を用いているという内容のものがありました。

 そこで、正式名称ではありませんが、新しいメニューは、寂静コース、旧来のメニューは密教ヨーガ・コースと呼べばわかりやすいかもしれません。そう言った意味では、旧オウム食は、エネルギーが上昇する根菜類を中心としてはいますが、すべて植物性タンパク質ですから寂静コースかもしれません。

 従来は、サマナは、ガンガン修行し、火元素、消化器官を強く保つことができることを前提としていましたが、現状を見ると、人によっては、自分の消化能力や、煩悩の状態からして、新しいメニューを選択するといい人がいるのではないかという視点から導入しました。選択に迷う人は、AIなど健康関連部署に相談するといいと思います。

 新しいメニューでは、たんぱく質を植物性で取るために、そばが増えます。そばは良質な植物性たんぱく源で、かつ説法にあるとおり体を温めます。また、今後は、様々なビタミンを含み、有害物質を排除する素材を加え、イメージとして、ベジタブルそば、といった感じのものにする予定です。もちろん、従来のメニューにもそばが含まれていますから、どちらのコースを選択しても、このそばは取ることができます(つまり、違いは単に量の違い、バランスの違いです)。


 二つ目の変更は、ヨーギー・カレーというメニューが加わることです。これは、その香辛料に特にターメリックを多く配合したことと、ひじき、ワカメ、切り干し大根、キャベツ、タマネギなどの、海藻と野菜類が含まれることがポイントです。

 ターメリックには、火元素の一部であるアグニを強め、体を柔らかくし、消化器官の働きを良くする作用があります。また、追加される海藻と野菜類は、天然のビタミン、ミネラル、食物繊維(注1)、その他の微量栄養素が含まれています。

 これらの食材の調達は、すべて不殺生の戒を守りながら行なわれます。これまで、ビタミン源は主にサットヴァレモンなどの合成ビタミンでしたが、天然のビタミン源が、不殺生の戒を守りつつ大幅に増えることになったわけです。また、今までのカレーと違って、六ヨーガの経典(熱のヨーガ)の経典に基づき、唐辛子、コショウは含まれておらず、ニンニクもほとんど入っていません。唐辛子、コショウは発汗の原因となり、熱が外に出るので、内熱を弱めると考えられています。また、同様に、大量に取れば腎臓を弱め、喉が乾いてしまう塩分も減量しています(注2)。

 このような効果に基づき、まさにヨーギーのためだということで、ヨーギー・カレーと呼ぶことにしました。味は素朴で現世的ではないのですが、高いヨーギーを目指す向煩悩滅尽多学男女の方には大変好かれるだろうと判断しましたので、よろしくお願いします(笑)。

 その他にもいくつかの変更が行なわれます。

 まず、夏場でもあり、体力を付けるために、昔あった栄養ドリンクの代わりになる物を試作し、財施部など疲労の激しい部署に配る予定です。いろいろ、好ましいと思われるタイプがあるので、まずは試してもらおうと思います。また、既に配布しているアーマラキーについても、従来の物より、効果が高い、より良質のアーマラキーを手配中です。さらに、疲労回復に役立つビタミンを豊富に含む果物も検討しています。

 なお、9月くらいまで待たなければなりませんが、取りにくい面のあった緑の錠剤に代わって、麦緑素に変えるように手配中です。これは、良質なたんぱく、いろいろなビタミン・ミネラルを含む健康食品の一つで、その酵素が腸内細菌叢を整え、消化・吸収を良くします。また、その有害性が最近よく話題になる活性酸素(老化の原因ともいわれている)を取り除く効果のあるSOD活性が高いものです。

 これらのお供物の改善は、皆さんがバクティや財施で積まれている功徳を、皆さんの修行が進むように還元しようとするものです。尊師の作られた不殺生の原則を守りながら、最新の栄養学の要請をも満たした、現在実現し得る最高の食事ではないかと思います。



 最後に一つ、修行上の原理原則に返って、強調しておきたいことがあります。修行上、最も大切なことは、心の浄化、カルマの浄化、帰依といったものです。

 ですから、例えば、ヨーギー・カレーの導入で、火元素を強め、消火を助けるお供物になったため、必要以上にたくさん食べてしまうようになれば、それは逆に今より火元素を弱めてしまい、加えて貪りのカルマを積んでしまいます。

 また、体調がすぐれない人の場合ですが、修行して治すことが第一なのに、修行をせずに、食事を変えることで調子を整えようとすれば、それも長い目では逆効果になりかねません。というのは、食事を内容を変えて調子が良くなっても、それ自体では、カルマは変わらず、食事を元に戻すと、再び体調は悪化する恐れがあるからです。だから、結論としては、しっかり修行をしながら、師や専門家の指導に基づき、必要ならば食事内容を調整するべきだと思います。一方、食事の改善に頼り、修行を怠れば、逆効果になります。

 また、お供物の内容が栄養学的に改善される中で、肉体執着や貪りにはまらないよう努力してください。修行のために超健康体は土台になります。トゥモのヨーガの経典でも、修行を支える土台としての肉体の力への配慮が説かれています。しかし、最終的には、我々は肉体への執着を切り、食と粗雑な身体のない上位形状界へ転生しなくてはなりません。よって、日ごろの供養の観想に力を入れましょう。そのエッセンスは、食を食と見ず(自分で食べると考えず)、グルとシヴァ大神に供物を捧げることで、貪りを断ち、功徳を積むことにあります。

 どんなものを食べても、グルに供養すればすべて浄化されるとも教えられたことがあります。マハーカッサパは、らい病患者の指が溶け落ちた食の供養を受けたとされています。また、伝説的なヒマラヤのヨーギーは長期間食事を取りませんでした。

 現在のわたしたちのステージでは、こうはいきませんし、食事の内容を修行に向くように配慮する必要があります。しかし、我々の目指すべき、究極的な聖者の状態を意識しながら、日々の修行に励みましょう。

 最後にこの寄稿の作成に当たってご協力いただいた、健康関係の専門家の皆さんに感謝します。

 

参考知識(健康増進班AS師補より)

注1 過剰な塩分と腎の関係について

アーユル・ヴェーダでは塩味過剰の害について、「過度の摂取は、ピッタを増加させ、血液の流れを停滞させ、渇き、失神、灼熱感、筋肉の機能障害や衰えを引き起こします。皮膚の炎症を悪化させ、中毒症状を引き起こし、腫瘍を開かせ、歯を抜けやすくし、精力を衰えさせ、感覚機能を損ない、皮膚のしわ、白髪や抜け毛を生じさせます。出血性疾患、胃酸過多症、炎症性の皮膚疾患、痛風、その他ピッタの過剰による疾患を引き起こします。」と述べています。

 この中の、歯・精力の弱りは中医学では腎の弱りに相当します。また筋肉・髪・感覚機能は肝の弱りに相当します。塩味は中医学では腎に属するとしています。塩味の過剰摂取は腎を消耗させ、腎が肝を養えなくするようです。これは、塩はスヴァディスターナを弱めるという尊師の説法とも関連すると思われます。


注2 食物繊維の効用について

食物繊維は、水溶性の物が、腸内細菌叢を改善して、毒素の生産を抑制し、不溶性の物が、食物繊維は便通時間を短縮し、大腸による毒素の吸収を抑制するそうです。